わたしは、いつも「自宅」を意識する。その人にとっての普通の生活を提供したい

介護職員池邉 美琴

わたしは、いつも「自宅」を意識する。その人にとっての普通の生活を提供したい

介護を選んだ特別な理由はない。ただ職業の 1 つとして選んだだけ。
介護の仕事を選んだ特別な理由や思いは、正直ありません。笑
高校卒業後の進路を考えるときに、就職か進学かどうか悩みました。
わたしの高校では進学する人より就職する人が多かったのですが、わたしは就職したくありませんでした。正直まだ遊びたかったので、進学をしようと。どの学校に行くか、何を学ぶのかのこだわりがなかったので、家から一番近い学校を受験しました。そこが介護の専門学校でした。合格が決まったとき、「これでまた遊べる!」と嬉しかったですね。でも、全然遊べませんでした。課題が多いし、実習も多い。実習をしていても「介護のしごとが楽しい」とあまり思いませんでした。でも、介護が嫌いではないし、仕事として「介護はあり」と思っていました。その感情は卒業するまで変わることはありませんでした。そういえば14歳の頃、認知症のおじいちゃんがグループホームで暮らしていて、そのグループホームによく遊びに行っていました。そのとき介護や施設に対して違和感を感じなかったのもあってか、卒業後の進路として介護を選択したことに迷いはありませんでしたね。

「池邉さん」と呼ばれたことで、人間関係の良さを感じた

専門学校のときの実習先があそか苑でした。あそか苑以外にもいくつかの施設で実習をしたのですが、どの施設もわたしのことを実習生扱い。名前で呼ばずに、実習生さんと呼ばれていました。実習を仕方なく受け入れているという壁を感じました。でも、あそか苑だけは違いました。職員みんなが笑顔で挨拶をしてくれて、実習生さんと呼ばずに池邉さんと名前で呼んでくれました。このことがあそか苑で働く決め手でした。介護の仕事はどの施設にいっても仕事内容はほとんど一緒。だからこそ、仕事内容以外の特徴が働く理由になってくると思います。私の場合は「人間関係」でした。人間関係が悪かったら、働くのが嫌になります。あそか苑の職員はみんな良い人。だから人間関係も良好だろうと思って、ここで働くことを決めました。で、実際働いてみても人間関係は思った通り良かったですね。分からないことを質問したらその場で答えてくれるし、提案や意見を伝えたら否定せずに受け入れ、新しい意見を伝えてくれて、わたしのレパートリーを増やしてくれます。

仕事を辞めようと思ったことはない。だって、楽しいから

あそか苑を辞めようと思ったことはまだありません。この仕事を続けている理由は、楽しいからです。人とかかわるのが楽しいです。入居者だけでなくスタッフとも。
意思疎通が難しい入居者がいらっしゃいます。私以外の職員もやり取りに苦戦しています。
どのようにすれば話が伝わるのかどうかを毎日考えています。そして、様々な話し方を試しています。まだ会話が通じたことはありませんが。例えばその人との会話の糸口を自分が発見できたときの「私、すごくない?!」という気持ちよさ。これって仕事を面白がれている瞬間だなと思います。

わたしは、いつも「自宅」を意識する。その人にとっての普通の生活を提供したい

わたしは入居者の生活を職員のペースに合わせたくありません。施設では、何時までにお風呂に入らなければいけない/何時までにご飯を食べなければいけないと「1 日の流れ」が決まっています。でも、その流れになるべく合わせたくありません。生活は日々変わっていき、毎日一緒なんかありえません。職員のペースで食事介護をしてしまうことがありますが、私はゆっくり食べてもらいたい。食事の時間が 2 時間と決まっていても、ご飯を普通に食べてほしい。そこにこだわりたい。もしわたしが自宅で過ごすのであれば、というのをいつも意識して介護をしています。どう過ごすことが「普通の生活」なのだろうかと自分自身に問い掛け、介護を提供しています。でも介護職員が少ないとき、思い通りの介護ができないことがあり、ジレンマを感じることがあります。そのときは、他の職員と協力しながらジレンマを解決していきたいです。

現状を変えていくには、自分自身が動かないといけない

現状を変えることに苦労しています。現状をより良くしたり、働きやすい環境をつくったりすることは、おそらく自分自身が動かないといけません。でも、1 人だけで働いているのではありません。だから、職員をどのように巻き込んでいくのかが現状を変えていく鍵だと思います。一緒に働く職員の共感を得ないといけないから。そのためには、根拠が必要です。
「コレを実行すればこういう結果になるから、ソコを変えたい」という提案をときどきしています。この根拠の積み重ねが共感につながり、現状を変えていくのだと思います。わたしが所属しているビハーラケア研究会では、新人職員全員が「ビハーラの理念」のどこかの節を深めていき、その深めたことをみんなの前で発表しました。わたしが担当したのは「美味しい食事を差し上げ」の部分。介助用のエプロンを着て、美味しい食事が本当に食べることができるのかと発表をしました。印象や見た目があまり良くないから、普通の洋服のようなエプロンに変えたいと。

「職員の都合」ではなく「入居者の幸せ」をずっと大切にしたい

また別の提案も行いました。「刻み食やミキサー食ではなく、普通のかたちのご飯が食べるような工夫をしたい」と。その後、ある職員から「嚥下機能が低下しているのに、普通のかたちのご飯を食べれますか」と質問がありましたが、無理だからこそ、普通の食事に近づけるような工夫を考えたいと強く思いました。そして、このような提案を行いました。
「刻み食やミキサー食の人の目の前に普通の食事を見えるように置けば、どのような食事なのかを目で見て、鼻で感じることでイメージしながら、ご飯を食べてもらったらどうでしょうか」と。たくさんの方と意見交換をするなかで、手間がかかるからという意見が出ました。これは職員側の都合だと思います。やったことがないからやらない。提案が良いものであれば、前例をつくったら徐々にひろがっていきます。

後悔をしたくないから、「いま」できることを「いま」したい

昨日よりも今日を頑張っていくことを目標にしています。昨日これができなかった/昨日時間がなかったから疎かにしていた部分を、今日こなしていきたい。提供していきたい。その日々の積み重ねが入居者の生活をつくっていきます。いつなにがあるかわからない方々が暮らしているので、「いま」できることを「いま」したい。先日、このようなことがありました。「いま、散歩したいねん」と入居者が仰ったとき、「いま雨が降っているから、今度晴れたら散歩に行きましょうか」と提案しました。もし明日にかけてその方に急変があったら、どうしようと思ってしまいます。わたしも入居者も後悔したくないから、「いま」したいことを実現していける介護職員でありたいです。

たくさんの違いが職場にあふれることが、誰もが受け入れられる環境をつくる

わたしとは違う価値観の人たちと働きたいです。価値観が違っても、意見が違っても、他者の価値観を受け入れ、他者の意見を尊重すること。価値観が違う方々からの意見が職場にあふれていたら、たくさんの人/たくさんのケースに対応ができると思います。対応が難しいケースがあったとしても、違った意見がいくつもあれば、誰かの意見でうまくいくことがあるかもしれません。このような引出しを職員のなか、施設のなか、法人のなかに増やすことが 1 人ひとりのケースに対応できることにつながります。いろんな場面で、いろんなケアで対応ができます。だから、わたしは価値観が違う人と働きたいです。