失敗、反省、勉強を繰り返すことが日々の成長につながっている

介護職員佐藤 睦子

この先ずっと必要な「介護」というおしごと

大学卒業後フリーターをしばらくしていたのですが、やっぱり正社員として働いていくべきだなと思うようになりました。せっかくそう思えたので、自分の人生をきちんと考えようと思いました。将来性と需要のある仕事ってなんだろうと考えた結果、介護業界がいいのではないかと。10年後もしっかり働けるだろうし、いまから勉強しておけば親の介護にも役立つだろうという想いもありましたね。
介護で働くのであれば、なにか資格でも取得しようと初任者研修を受けにいきました。父が初任者研修の資格をもっていたので、あの父でもとれるなら私でも取得できるだろうというのも理由の1つでした(笑)
初任者研修を取得して仕事を探したときに自宅の近くに「あそか苑ももは」があるのを知りました。近場だからという軽い気持ちで応募したら、そのまま採用に至ったので、入職しました。

漫画でしかイメージがなかった「介護」

祖父母も元気だし、両親ともに介護の仕事には携わっていませんでした。父からもヘルパーの話を聞いたことがなく、介護のことを聞ける状況が身近になかったので、介護のイメージがまったくありませんでした。それこそ「ご飯まだですか?」「さっき食べましたよ」という漫画にあるようなやりとりをするのかな、と思っていました。
いざ介護の現場に入ってみると、実際に「ご飯まだですか?」って質問がありました。でも漫画と違い「さっき食べましたよ」というと利用者さんは怒るんですね。
なぜなら本人の中では食べていないわけです。誰だって自分の言っていることを頭ごなしに否定されたら怒りますよね。冷静に考えてみると当然ですが、経験してみないと想像がつかないことってたくさんあるんだと学びました。いまでは「お菓子を食べて待ってくださいね」や「いま用意しています」と本人を否定しない対応をしています。
昔は認知症という言葉がなかったので、ボケているで済ませていただろうと思います。利用者さんのなかには毎日「地元にすぐに地元へ帰らないといけない」と話をする方もいます。そんなとき私たちはただそのお話を聞いてあげることしかできません。でもそれを「またボケている」で済ませて放置するのは違うと思います。現場で働いて利用者さんに会って触れ合ってみると気づくのですが、利用者さんにとって毎日「すぐに帰らないといけない」というその状況は普通の日常で、もっと利用者さんのことを考えて接しなければいけないというのは感じました。

1人ひとりに合わせた対応が、満足感を生む

利用者さんの状況は様々なので、1人ひとりにあった対応を心がけています。
意識がはっきりせず、まだ施設にいることが落ち着かない利用者さんには、何度会ってもいつも初対面だといわれます。そんな利用者さんに対しては、介護職員としてお世話をしているというよりは、ホテルのコンシェルジュのように接しています。やはりこちらがいくら知っているとはいえ、初対面と感じている利用者さんに馴れ馴れしく話しかけるのは、本人にとっては嫌だと感じるのではないかと思います。
逆に自分の体が動かないから介護施設でお世話になっているということをしっかりと理解し、私を「介護職員の佐藤さん」ということをきっちりと認識しておられる利用者さんには、親しみをこめて「おはよう」「元気やった」といったようにお声がけをしています。ただそのぶんオムツを替えるときには羞恥心も感じておられるでしょうし、しっかり訴えられるからこそ、私たち介護職員に対して「いつもしてもらっているから、言わないでおこう」と遠慮される利用者さんもいらっしゃいます。その遠慮に気付いていく対応を心がけています。

失敗、反省、勉強の繰り返すことが、日々の成長につながっている

いまの事業所のリーダーやいちばん信頼して慕っているパートさんは、利用者さんに敬語をあまり使わない接し方をしています。「一緒にいきましょうか」ではなく「一緒に行こうか」というように、馴れ馴れしいというより信頼があるからこその関係が「そこ」にありました。下の名前でお呼びすることで心をひらいてくれる利用者さんがいることも彼らから学んだことの1つです。
私自身、アルバイトの接客では敬語を使うのがすごく苦手で、働いていたときて「恐れ入ります」という言葉を一回も使ったことがないのですね。そもそも「恐れ入ります」ってなんやって感じで(笑)。ただフランクなのと親しみを込めた話し方は違うということをいまでは理解できます。むかしは若かったこともあり、笑顔でいればある程度許されていました。介護職員になって1年半たったいまは先輩たちと同じように敬語をあまり使わないのですが、信頼にもとづく「親しみ」を意識して親身に接することを大切にしています。
ただ親身になるからこそ、身内のように感じてしまっているからなのか、わたしが怒ってしまったのが最近の反省点です。
利用者さんにも事情があるので当然ですが、普段できていることが「できない」「やってくれない」とストレスを感じてしまい冷たくあたってしまうことがあって、あとから反省することを繰り返していた時期がありました。
そんなときたまたま実務者研修に参加する機会があって、そこでは参加者の皆さんが敬語を使っていてあらためて敬語の大切さに気づきました。そこで現場でも敬語を取り入れることにしました。自分がストレスを感じるときにあえて敬語を使ってみたところ、同じ状況なのに心に余裕ができたことに気づきました。いままでだとイライラしてしまっていた自分を客観的にみることができて、怒ることも、冷たい対応になることもなく利用者さんに負担をかけないで済んだときはすごく安心したのを覚えています。そこから冷静さを欠いたときは、敬語を使うことで心を落ち着かせています。
3分前には「行こうか」「どうしたん?」と親しげに話をしているのに、急に「どうされましたか?」と敬語になるので周りから見ているとおかしく感じていると思います(笑)。でもそれで自分の心をコントロールできて、利用者さんにも嫌な思いをさせないなら自分が少し変わった目で見られるくらいなんでもないかなと。
カッと頭に血がのぼ登ったときは感情をそのまま言葉にだすのではなくて、敬語に置き換えるというフィルターを通すことで冷静になれるのでオススメです。

介護スキルを高め、利用者さんと関わる時間を増やしていきたい

まずはお給料をあげるためにも、介護スキルを高めるためにも、介護福祉士の資格をとることが目標です。まだ目指すべき介護職の姿がはっきりしていません。なにより人を指導することはまだ考えられないのが本音です。
ただ、いま働いていて自分の手がすごく遅いのはわかっています。「丁寧なことはいい」と褒めてもらえるのですが、あまり遅いと結局は業務だけに集中してしまって利用者さんとの時間がとれない状態になってしまいます。やるべきことは手早く片付けて、余った時間を利用者さんのことを知るためにもゆっくりと話がしたいです。
私たちが話しかけないと利用者さんたちってずっと座っているだけで1日が過ぎてしまうことがあります。相席で座っていても、みなさんが起きて会話をしているわけでないですし、動ける方は部屋に帰ってしまいます。TVをみているだけで1日が終わってしまうのはすごく悲しいじゃないですか。だからこそ、業務のスピードを向上させて利用者さんとのかかわる時間を増やしていきたいです。

コミュニケーションを取り合い、お互い助け合える人と働きたい

一緒に働きたいのは、会話ができる人。どんな出来事があっても、いま自分はどう思っているのかを伝えるのってすごく大切だと思います。それがマイナスの感情であればいっそう伝えるのが大切だと感じています。私は話をするのが好きなのですが、会話が苦手な人がいるのはわかっています。特に男性は溜め込むところがあるように思います。でも「いま怒っているな」って結構わかります。歩き方が雑になったり、ドアをきつく閉めたり、物を上から落としたりと、態度にでるんです。その状態ってすごく声がかけづらいんですよね。怒ることは誰にでもあります。ただ不機嫌を態度に出して相談しないのは一緒に働く人に気を遣わせて困らせてしまいますし、利用者さんにもしっかり伝わっています。
嫌なことを伝えてくれれば話を聴くこともできますし、何か手伝えることがあるかもしれない。だからこそ一緒に働く人には嫌なことを溜め込まず、どんなことでもいいのでコミュニケーションをとって、他の職員に頼って欲しいですね。人に話すだけでも気持ちはすごく楽になりますから。