時間を忘れるような空間を作ってあげたいって思います。利用者さんにも、職員にも。

ユニットリーダー小川 三穂

何か資格を…と考え、介護の世界へ

わたしの場合は、はじめから将来の夢として考えていたわけじゃなくて。何か資格を持っておいたほうがいいよと親に言われて、「何が取れるやろう?」って考えたとき、介護の資格が一番取りやすかったという単純な理由で介護の世界に入りました。おばあちゃんと過ごす時間が多く、おじいちゃんおばあちゃんに抵抗がなかったこともあって、わたしにとっては入りやすかったし、とくに抵抗はありませんでした。

専門学校では、人対人の仕事における「責任感」をずっと教え続けられてきました。学校では、たとえばコミュニケーションの方法ひとつとってもすごく難しい言葉で表現するようなところが、正直硬いなあ…と思っていましたが、実際に働いてみて、相手を尊重しつつ、友達でもなく年齢も上の方と円滑にコミュニケーションをとることの難しさを感じるなかで、その「硬さ」も生かすことができているので、学んできて良かったと思っています。

がむしゃらに走った一年目

一年目は、がむしゃらに走りました。
現場では教科書通りのモデルのような利用者さんが居るわけじゃないから、これまでやってきた介助技術を活かすのが難しい。1:1のケアしか想定しない学校とは違って、実際には一度に何人も見なくてはならず、時間が足りない。それが一番しんどいことでしたが、『この人は待ってもらえる人、この人は待てなくて転倒のリスクがある人…』というように危険を予測しながら優先順位を立てるようにしたり、先輩に話をきいてもらったりしながら、少しずつやり方を探っていきました。慣れるまでのしんどさはありましたが、先輩だけでなく、悩んでいることをすぐ相談できたりプライベートなことも話せるような距離感のユニットだったので、一年目からすごく楽しかったです。

余裕の出てきた二年目と、方向修正の三年目

二年目になると少し余裕が出てきて、その余裕からか怠ける方向に走ってしまった部分がありました。利用者さんのためを一番に考えるよりも効率を考えすぎて、いかに楽できるかというところに傾いてしまっていたんだと思います。そこから正しい方向に行くことがしんどかったです。

それを正すきっかけになったのは三年目、カピラ特養への異動でした。そこであらためて基本から教えられたことで、いかに利用者さんの生活の質を下げずにやっていくかということが大事なんだと、勉強になりました。

業務優先・職員優先になると、どうしてもそこを下げがちになってしまう。たとえば、入浴の時にパッドを替えるんだから入浴場でパッド交換したらいいよね?っていう考えになっていたんですが、そうするとやっぱりQOL(生活の質)が下がってしまう。「トイレはトイレ、入浴は入浴。お風呂場はトイレじゃないよ?」と言われて、確かにそうやなあ…ってハッとしたり、職員同士の会話の中で少し雑な表現をしていると、「そういう言葉遣いが介助に出てくるよ?」と指摘を受けたり。でも、そういうことを上からキツくいわれたり怒られたりするんじゃなくて、リーダーさんが明るい方だったというのもありますが、もっとこうしたほうが小川さんのためだよ、というかたちで指導してもらえたから、すんなり「はい!」って受け入れることができたと思います。

リーダーとして一歩ずつ根気よく

四年目の今年はリーダーになって、半年ちょっとになります。基本的になんでもやってみようという性格なので、経験になるだろうと思って引き受けましたが、リーダーのお仕事、大変です。笑

教えることひとつとっても、教えたことをすぐ実践してもらえるわけじゃなくて、だんだん皆さんのやりやすい方法になっていってしまう。やり方が崩れていってしまう、また立て直す、崩れていく、の繰り返し。新しいやり方に慣れるのがしんどい気持ちもわかるけど、ルールを守ってもらわないと成り立ちませんし…。

最初は教えるのではなく、自分がしっかりやっていれば背中を見てついてきてくれるかな?と思って皆さんの動きを見ていたんですけど、そう簡単には人ってついてこないんだというのが3カ月ぐらいかかってようやく理解できて。今はもう、ひとつずつ細かいぐらい言っていかないといけないんだということに気づき始めたところです。

そうやって教えることに時間を割いていたら、どんどん自分の仕事がとどこおっていき、リーダー業務に入る時間がなくなってパニック状態になってしまったり、まだまだ余裕があるとはいえませんが、理想は、もっと楽しく働きたいです。

新しいシステムも取り入れて、ゆったりした時間を作りたい

今って、業務しかやっていないんですよ。
コロナ禍でボランティアさんを招いてのイベントが軒並みなくなってしまったこともありますが、特養ではコロナ禍以前でも利用者さんと外に出かける機会は年間に2回程度と少なかったので、もっと利用者さんと外に出かける機会を増やしていきたいです。ずっと同じ空間にこもりきりだと、どうしても、『次は排泄いかないと、次は入浴いかないと…』って時間に追われてしまう。そうじゃなくて時間を忘れて働ける、時間を忘れて過ごせるようなひとときを作ってあげたい。利用者さんの楽しみを増やしたいのはもちろん、職員も気分転換になるだろうと思うんです。

わたしは業務とは別に、今年から新たに発足したICT委員会に入っていて、いろんな事業所のいろんな職種の人たちと集まって、アイデアを出したり勉強会をしながら新しいICT機器の導入に向けて動いていってるところなんですが、デイサービスが介護レクロボットを導入するというのを聞いて、特養にそれがあってもいいよね?って思いました。デイの人が考える、「利用者さんにいかに楽しんでもらうか」という発想は、特養の人にも大事なことだと思います。特養の日常はどうしても単調になりやすいので、そういうところで刺激を入れてあげられたらいいなと。

ICT委員会は新しい取り組みだからワクワクするし、新しいシステムを活用することで、もっと余裕ができて、外出したり楽しい催しごとをする時間がとれるようになるだろうと期待しています。

やっぱり、人対人の仕事は面白い!

行ってみたい部署があるとしたらグループホームでしょうか。入職してからずっと特養勤務なので、利用者さんと一緒に料理するとか考えたこともなくて。今の自分だったら「料理なんて危ない危ない!」っていう発想になってしまいそうなんですけど、いかに利用者さんの持っているチカラを活かすかを考えるには、グループホームとかショートステイに行ってみたら勉強になるのかなと思うので。

まったく別の職業への転職を考えたこともあるんですが、「笑える瞬間ってあるのかな?」って考えたとき、それがイメージできなかった。介護って楽な仕事ではないけれど、人対人だから、面白いことや会話していて楽しいことが日々あるし、ただ黙々と仕事してるだけじゃなくて、毎日笑える瞬間があるんです。それがこの仕事ならではの良さだと思っています。

リフレッシュできる時間も大切に

プライベートでは、友達と買い物やごはんに行ったりするほかに、散歩をします。家の近所を歩くこともありますけど、阪急電車で十三まで行って淀川の河川敷を歩くのが好きです。高くて見晴らしがよくて、一番歩きやすい。散歩の醍醐味は…無…でしょうか?笑 夜勤明けに歩くこともあれば、夜勤が終わって起きてから夜歩くこともあったり。そういう時間にもリフレッシュできているのかなと思います。