「わたしに何ができるのだろうか」を見失わずに人材育成という文化を根付かせる

人材育成部長吉永 望

『あなたしかいない。一緒にやりたい。』の一言で、訪問看護の世界へ

現在は人材育成の部長をしています。人材育成部長に就任する2年前は管理職をしながら、訪問看護という仕事をしていました。もともと、看護という仕事をしていくなかで、病院や医院、施設やデイでの働き方の想像はつきましたが、「訪問看護」という仕事には抵抗があり、自分はその仕事に就かないだろうとずっと思っていました。そう思ったのには理由があります。訪問看護は1人で利用者様のお宅に出向いて、療養している方の看護をしなくてはなりません。そこには医者も先輩看護師もおらず、1人である程度のケアをしなければならない“怖さ”がイメージの中にありました。
ある時期に、尊敬する先輩看護師から「訪問看護事業所を立ち上げるので手伝ってほしい。」と誘われました。「あなたしかいない。一緒にやりたい。」という言葉に、「とりあえずそこまで言っていただくのなら、一度やってみてダメならやめればいいか。」くらいの勢いで飛び込んでみました。病院での広く浅くの経験で、自分に自信がなかったので、訪問看護の世界に飛び込んではみたもののはじめは失敗ばかり。
療養しておられ、痛みや苦しみに耐えていらっしゃる利用者様やご家族様を前に、安心できる言葉をかけることができなかった時期もあり、何もできない自分に悔し涙を流しました。
それでも、必死さは利用者様に伝わるのか、「あなたがそばにいてくれてよかった。安心して自宅で過ごすことができました。」という言葉をいただいたときは本当に心の底から嬉しく思い、どんどん“訪問看護”にはまっていく自分がいました。

『在宅に帰ってきて良かった』 家族からの言葉が、仕事のやりがいだった

訪問看護を理解するために外部の研修にも意欲的に参加し、ターミナルケアにさらに興味を持ったことで県外まで足を運び学ぶことにも楽しみを感じていました。学びは専門職としてのスキルや意識を高めます。
その頃から15年…。いまでは“訪問看護”という仕事が大好きで、尊敬しあえるチームができ、日々相談したり、励ましあったり、時には喧嘩もしたり。それでもお互いの強みを高めあえ、弱いところをカバーしあえるチームのメンバーが増えていくことに誇りをもって働いていました。忙しい時は、1日に5、6件訪問にまわり、ターミナルケアや精神疾患を持った人の看護、入浴介助や点滴、処置と多岐にわたることをしながらも、緊急コールが鳴れば夜中の2時、3時でも訪問。フラフラになりながらも日々利用者様や家族さんに対してわたしは何ができるのかを考え、自分が発した言葉や取った行動が良かったのかを自問自答しながらも、家族さんから「在宅に帰ってきてよかった。」という言葉を最終的に頂いたときには新たなエネルギーになりました。

『わたしに何ができるのだろうか』を見失わずに、人材育成という文化を根付かせる

2017年度、わたしは訪問看護から離れてしまいました。いま訪問看護という居場所から組織の「人材育成部長」という立ち位置となり、「わたしに何ができるのだろうか」と日々悩みながら仕事に取り組んでいます。訪問看護に飛び込んだ時のように「まず、やってみよう」という想いから。
以前、施設の看護職として働いた時期がありました。そのとき、介護職の方の利用者様に対する一生懸命さに感動した覚えがあります。申し送りで現場に行ったときに、利用者さんの起居動作に対して福祉用具の検討をしていたり、夜間尿の計測をしパットの適正化を検討したり、混乱が起こっている利用者さんに対しての言葉がけの的確さにプロだなと尊敬したことがありました。その頃は、看護も介護も一緒になって、利用者さんの為になる事に対して意見を出し合い、よく議論した覚えがあります。

この1年、介護を理解するためにいくつかの研修にも参加してきました。その中で印象的なことがありました。それは、若い介護職員が意欲的に取り組んでいることを発表している場面です。彼らは「自らが発想し、それを実現するために行動していく楽しさ」を感じているように思いました。利用者さんのため、現場で働く職員のために、自分が考えたものを作り上げていく楽しさがとても伝わる発表を聞くことで、現場職員ではない人材育成の立場のわたしのモチベーションが高まりました。

この1年で様々な職員とかかわりました。そして、沢山の発想を持っている人にであいました。彼らの発想や言葉を拾い上げ、彼らが行動できる環境をつくっていきたい。それが良い法人をつくっていく要素の1つだと思っています。その環境をつくるために、職員1人ひとりの居場所づくり、新たなチームづくりをこれからしていきます。