先輩の作ってくれた道を、装飾しながらまっすぐ進む。

訪問看護事業・事業管理者吉川喜恵

祖父の死を経験し、最期の瞬間まで大切にしたいと思う看護師の道

小学校5年生の時に祖父が亡くなりました。死亡確認をしている主治医、看護師を見て、その人が何十年と生きてきた最期の瞬間を自分が看護師だったらどう向き合うかと思ったことがきっかけです。だからこそ今でも自分でここだけは守りたいっていうところはありますね。

厳しかった病院勤務時代の先輩。そして、訪問看護の道へ。

専門学校を卒業して大学病院で勤務を始めました。私の同期は大学卒業の方ばかりで年上の人がほとんどでした。勉強すること、根拠を持って仕事に取り組むことを熱心に指導して下さる先輩がいました。当初は「怖いから勉強しなきゃ、調べなきゃ」で必死だった私ですが、10年が経った今、あの先輩に出会ったからこそ、わからないことがあったら調べたり疑問に思う視点を持つことが出来ています。働いた病棟は癌末期の方が多かったのですが、大きい病院だったのでベッドサイドに長く個別でいられるわけでもありませんでした。病棟では患者さんが人生最期の外泊で身辺整理をしてこられる方が多かったんです。最期の在宅生活をどう送って帰ってきているんだろう・・・気にはなりつつも、そこになかなか踏み入れれず、何人もの最期に立会いました。幼い頃から思っていた、その人らしい最期ってなんだろう。アプローチできてないよなって思い、在宅に興味を持ち始めました。その後いきなり在宅はハードルが高かったのでデイや外来で経験を積んでから訪問看護の道へ進みました。

なにもわからなかった訪問看護 救われた利用者様のやさしさ、先輩の行動。

訪問看護に足を踏み入れた当初、右も左も分からないことだらけでした。人生経験、看護経験もほとんどない中、利用者様に向き合うってすごく難しいことで。もどかしい時もありましたが、「あなたのその年齢、経験、感性で今できることを真摯にやればいいの」って先輩に言っていただいたことで、私らしく利用者様と真剣に向き合おうと思えたんです。ベテランの看護師さんの方が安心すると思うんですけど、私の存在を認めてくれるっていうことが利用者様に感謝です。また先輩方も私のことを持ち上げ、入りやすい環境を作ってくれて今がありますね。

あなたの今、置かれている状況で咲きなさいー

訪問看護の先輩方が他部署に移動になった時、「ずっとあなたといることがあなたの成長のためじゃない」「あなたの今置かれている状況で自分らしく輝きなさい」と言って頂きました。その言葉がスイッチになって自分の今置かれている状況を最大限に活かそうと思って。スタッフのいいところを見ようだったり、働きやすい環境を整えようだったり。人の想いを変えることってすごく難しいと思うんですけど、自分がシフトチェンジすることでとらえ方が変わることってあるんだなって思いましたね。

導いてくれた「道」を守りつつ、新しく入職した人の色も出したい。

今訪問看護の事業管理者と、法人全体の働きやすさを作っていく共育委員会の委員長をさせてもらっています。訪問看護も共育委員会もそうですが、先輩方が導いてくれた道っていうのは…今後も守り続けないといけないし、ここだけは変えられないっていうところは守りつつ、ただいろんな人が入ってくることでその人の色も、一緒に歩んでいく道に装飾してほしいなって思うんです。訪問看護って私が入った時からずっとそうなんですが、新しいことをはじめるときって、絶対みんなで話し合って納得のいかない人がいたらその人が納得できるまで話し合いを続けるんです。上から「あれして」「これして」ではなく、その人の意見も尊重する。だから新しいスタッフが入ってきてもそこはブレずにやっていきたいです。私が、おかしなことを言っても否定せず、受け止めてくれた先輩がいたからこそ、そう思えるんだろうなって思います。

共に一人一人が能力を活かし輝ける場所作りを。

訪問看護メンバーも共育委員会のメンバーもそれぞれがすごい能力を持っていて、自分が発想する以上のことが出てくる。私だけだったら「1」の発想でしかないんですけど。ありがたいなって思います。旗を振り続ける上長の人たちにもスタッフのチャレンジしたいことを上手く伝えていくことで、みんなが輝ける場所が作れたら何よりかなって。

フランクに、新入職の職員にも歩み寄っていけたら。

事業管理者でいろいろな部署の方と関わることが増え、悩みを共有したり、新たな発想がうまれたり・・・横つながりの関係も大切にしていきたいなと思います。一方で、新入社員の方の新鮮な意見をもらった時に気づかされることってとても多いんです。なので、なるべくフランクに歩み寄り、しゃべりたいなって思ってもらえる人でありたい。どうせやるんだったらみんなで楽しみたい。楽しいことってどんどんアイデアが生まれてくると思うんです。嫌々やっていてもいいものは生まれないですし。仲良しこよしではなくて相談しやすい環境を。私がそうしてもらっていたように、「こんなこと質問してもいいのかな」っていうことも「ぜんぜんいいよ」って言える環境を新しい人にも作ってあげたいですよね。

「道」を迷うことなく次の人も歩んで貰えるように。

次に進む人が歩きやすいように、道を作ってきてくれた先輩達の想いをつなげていきたい。「この道」だけはブレずにいてねっていうのを伝え続けること。いろんな人の色を取り入れながら時にはぶつかることがあっても、お互いを認めあい一緒に歩いてもらえるように、ちゃんと伝え続けることをしていきたいですね。