「やりたいこと」が明確な若者が多い福祉業界の未来は明るい

あそか拠点長西村 英樹

伝統を守る「神主」ではなく、変革していく「福祉」を選択した自分

将来に対する明確な夢もなく、選択肢を増やすために大学に進学しました。
教員免許を取得できる大学だったので、「将来は教師もありかな」と入学当初は軽い気持ちでいました。そんな軽い気持ちでいたからか、大学生にありがちなモラトリアムな生活を満喫してしまい、教員免許の取得単位が足りず教師の道はそうそうに諦めました。教員免許と並行して取得を目指していたのが神主になるための資格でした。ですので、就職を考えたとき、神主か一般就職かという少し特殊な二択で悩みました(笑)。神主はもちろん神社で働くので、今までの伝統を守っていくことになります。変化しないことが大切な仕事。では逆に変化のある仕事ってなんだろうと考えたときに浮かんだのが福祉業界でした。わたしが20代前半の頃はまだまだ老人ホームも少ない時代でしたが、これからは高齢化社会になっていくとニュースで取り上げられていました。どんどん移り変わっていく仕事だと感じました。ちょうどそのとき、初代の理事長からお誘いがあり、福祉に挑戦することに決めました。介護職の現場ではなく現場の人をサポートする事務職で入職しました。そこからあそか苑一筋です。

想像していた事務職とはまったく違った「なんでも屋」としての日々

介護の分野はまったくの未知の世界でしたが、不安はなく、なんとなく楽しそうだなとしか思っていませんでした。楽観的な性格なのかもしれません。知らないからこそ覚えることがたくさんあり大変でしたが、楽しそうだなと思っていたことが間違いじゃなかったなと感じたのを覚えています。事務職でしたがパソコンに向かって一日入力作業をすることはほとんどなかったです。当時は事務職の人はいまよりも少なく、”法人の何でも屋”をしていました。事務処理はもちろんしなければいけませんが、物が壊れたら修理をしたり、利用者の送迎や相談対応をしたり、求人広告を出したり面談をしたりと幅広く行っていました。失敗もたくさん経験しました。利用者もそのご家族も自分より年を重ねており、しっかりと人生経験を培ってきた人たちばかりです。若さが故の口の利き方、対応の仕方でお叱りを受けることもありました。未熟さゆえに利用者の言葉の裏側にある”意味”を理解できずにクレームになってしまった苦い思い出もあります。親しみのある対応と馴れ馴れしい対応は違います。その一線はいろんな経験をしないと学べません。周りの支えのおかげで成長でき、今があると感じています。

「やりたいこと」が明確な若者が多い福祉業界の未来は明るい

私たちの時代、特に私の周りにそういう人が多かったのかもしれませんが、「なんとなく大学に行って、何気なく仕事をしないといけないな」と考えた人が多かったように思います。その点、今の若い人たちは自分の意思がはっきりしているので、すごくしっかりしていると感じますね。長年採用活動をしていますが、面接でも明確に「これがやりたい」「こんなことを実現したい」とはっきりとおっしゃる方が多いです。
昔は介護業界の規模はまだまだ小さく受け入れる余地がせまかったですし、福祉系の学校は多くありませんでした。私が入職した当時はまったく違う分野から福祉の業界で働く人ばかりで、働きながら資格を取得するのが一般的でした。いまは福祉を学んだ職員も多くいらっしゃいます。「何のために介護・福祉の世界に進むのか」をはっきりと持っている人が多いです。介護のイメージアップが世間では言われていますが、介護はやっぱり大変な仕事です。いま介護を目指す人は、大変な仕事と知って飛び込んできています。だから介護に対しての確固たる思いを持っているのではないでしょうか。

「ありがとう」の一言に楽しさややりがいが詰まっている

純粋で真面目な人が介護職として入職しています。介護職を目指すきっかけがおばあちゃんっ子、おじいちゃんっ子だったというのもよく聞きます。あそか苑で働く職員に共通していえるのは、お年寄りが好きという点。屈託のない表情や笑顔を通して、裏表のない本当の気持ちにふれあうことができるそうです。仕事のやりがいって何?と職員に聞くと「”ありがとう”の一言」とよく答えています。どの仕事にも言えますが10のうち9は大変なことです。10のうち1に仕事の「楽しさ」や「やりがい」があり、「ありがとう」という言葉にそれらが凝縮されていると思います。毎日顔をあわせていた利用者が亡くなるというのは本当に辛いことです。それでも働き続けることができるのは、利用者やご家族の感謝の一言があるからです。「また次に進んでいこう」と思える魔法の言葉です。

気持ちが前のめりになった瞬間、視野がひろがっていく

まじめな若い職員が多いからこそ、もっと視野を広げるためにいろいろな体験をしてほしいです。介護だけに特化し勉強していくと、専門性は深まりますが視野がせまくなります。介護の現場は生活の場です。だから介護以外のことを積極的に学んでいってほしいですね。また広い視野を持つために、若い職員はたくさん遊んでほしい。遊びを通して様々な体験をしている人のほうが成長が早いと感じます。介護技術を身に付けるには時間が掛かります。でも気持ちや視野は自分が前のめりになった瞬間、どんどんひろがっていきます。いろいろな体験をすることで悩みの解決につながることがあるし、とっさの対応力を得ることができます。挑戦をせずに無難な人生を歩んできた人よりいろんなことにチャレンジしてきた人の方が人間として面白いですよね。

職員1人ひとりの意見を活かす法人へ

法人全体で職員1人ひとりの発想や意見を活かす取り組みをしています。いままではユニットリーダーや先輩職員の経験にもとづく意見に若い職員がついている形でした。でも、これからは若い職員の様々な提案に対して、先輩職員が味付けをしていく方向に変えていっています。「こういうことをしたい」という明確な思いや夢を持つ職員の意見が活かされるような職場にしていきたいです。そのためには管理職であるわたしたちはあまりでしゃばらずに、職員を見守ることを心がけています。どうしても口出してしまうんですね。自分の経験を伝えたいですし、失敗もしてほしくない。でも相手に頼らず自分で考えてやってみることは大きな成長につながります。失敗することでわかることもたくさんあります。全てに口出ししてしまうと、人は成長しません。指示を待つことに慣れてしまうと新しい試みができなくなります。そして主体的に考えることも行動することもしなくなってしまいます。そうなると仕事はおもしろくなくなります。だからこれからは現場職員が主体となってどんどん案を出せる環境にしたい。良いことも悪いことも案を出して話し合うことで、本人も周りも納得して動き出すことができます。案を出したらまずはやってみることを大切にすすめていっています。介護は日常の連続。失敗したとしてもより良い方向にしていく行動ができると私は考えています。最初から失敗しないように練りに練ってというのはよくないと思います。発想って突然出るものです。アイデアを出すにはたくさん話をしなければなりません。思い付きが具体化しなくても、まずはやってみる。そしてやってみた結果、「どうだったのか」を振り返り、次につなげていくことが、組織を良くする上で大切なことです。

あそか苑はいまトップダウンからボトムアップに変革の真っ只中

いまトップダウンからボトムアップに変革している最中です。今までは良くも悪くもトップダウンで動いていたのがあそか苑でした。トップダウンは決断実行のスピードが速くなるので必要なときもあります。ただトップダウンが続いてしまうと職員は自分で考え、行動をしなくなりがちです。当事者意識がなくなって仕事がおもしろくなくなってしまいます。だからこれからは職員1人ひとりから案をどんどん出してもらう。管理職はそれを見守ることをしないと発想もでてきません。ちょうど組織内で配置転換があり、いま私の直属の部下は介護の現場からきた人たちばかりです。だからこそ「もっとこうしたい」という現場の声に近い意見が飛び交っています。それらの意見をまずは受け入れる。そしてお任せしています。同じ内容でもトップから押し付けられたものと現場からうまれたものでは法人全体への浸透のスピードは雲泥の差です。私の役目は現場の声をできるだけ受け入れて、トップに提案し、実行に移す流れをつくることです。そういった意味ではいちばん、無責任な立場かもしれません(笑)。トップダウンからボトムアップに徐々に変わっている半年。これからも現場の意見と向き合い、行動を生み出し、どんどんよい方向にしていきたいですね。新しいことをはじめると失敗の可能性があるのは当然です。でもなにも始めなかったら失敗もゼロですが成功もゼロなんです。いまは組織が現場とグっと近くなっていて、現場の温度を感じて働けるようになっています。私自身、変化を楽しんでいるところです。

たくさんの挑戦をし、たくさんの失敗を積み上げてほしい

いまあそか苑には若い人たちが増えてきています。いろんな発想力がでてきているところです。それを支える体制が整ってきています。そのアイデアが形になっているところです。だから自分なりのアイデアを持ち合わせ、アイデアを実現したい人を待っています。介護のことじゃなくてもいいんです、どんなことでも意見を持ち、まずはやってみようと行動できる人と一緒に働きたいですね。みなさまには、自分の中で勝手にだめだと決めつけずに、まずは伝えることをしてほしいです。いまなかなか自分の意見をだせない人は得意分野以外のことに挑戦してみてください。未知の分野での経験をすることで、自分の引き出しが増えていきます。そうすれば意見がくっきりとしていきます。そしてその経験をあそか苑で活かしてくれると嬉しいです。