ずーーーーっとなりたい職業だった、福祉のおしごと

介護職員柴田 遥

「ずーーーーっとなりたい職業だった、福祉のおしごと

幼少の頃からおじいちゃんやおばあちゃんが好きで、小学生の頃からぼんやりとですが「お年寄りに関わる仕事」がしたいなと思っていました。その思いは中学、高校と変わらず、大学進学も高齢者の支援がしたいという思いから自然と社会福祉学部を選びました。大学では、社会福祉協議会での実習で市民活動のあり方を学んだり、高齢者支援のボランティアを体験したりすることができました。それだけでなく、「地方の高齢者が住みやすくするための方法」や「ひとり暮らしの高齢者を支える人たちへの支援」など多くの課題に対しての取り組みを学ぶことで、自分なりの高齢者支援の捉え方を考えることができました。
大学教授や友達、実習でお会いした方々との出会いから高齢者支援の良さを知りました。そして、小学校からぼんやりと抱いていた「お年寄りに関わる仕事」がしたいという思いが、大学生活を過ごす中で具体的に「地域包括」だという答えを見出しました。
福祉の仕事がしたいとは思っていましたが、介護をしようと思っていませんでした。ただ地域包括の仕事をするのであれば、介護の現場で働き、利用者さんに直接関わることが大切だと気付き、介護職に就くことに決めました。いまは介護士として一人前になることが目標ですが、ゆくゆくは地域包括で働きたいと思っています。

利用者さんはいつも笑顔。職員もいつも笑顔。はじめに抱いた「暗い印象」が一変

就職活動をはじめたとき、福祉から離れて広い視野を持ってみようと考えて、一般企業の説明会に参加したことがあります。まったく福祉とは関係のない家具屋やメーカーを見て回りました。だからなのか、まわりの友達より就職活動は遅れていたと思います(笑)。
福祉以外の企業を見たけれども、「福祉の仕事がしたい」という気持ちはピクリとも変わりませんでした。わたしの原点は祖父母にあるのでせっかくなら地元の伊丹で働きたいと探していたところ、あそか苑を見つけました。あそか苑は地元・伊丹にずっと存在しているにも関わらず、あまり関わる機会がなく、最初は「ちょっと暗い」印象で、入りにくい施設だと感じたのを覚えています。面接のなかで、理事長があそか苑の暗いイメージを変えていきたいと言っているのをお聞きし、「私も一緒に変えていきたい!」と思って入職を決意しました。わたしはいまショートステイで働いているのですが、最初の印象と同じように職場も暗い雰囲気だと思っていました。でも、予想とは違って非常に明るく、利用者さんはいつも笑顔。職員もいつも笑顔。笑顔が伝染していましたね。暗い印象が一変しました。

先輩たちのように、心に余裕を持ち、利用者と寄り添っていきたい

日々の業務に追われてしまい、丁寧な支援・関わりができていないことがいまの課題です。わたしは大学で相談援助を学んできました。寄り添った支援とはどのようなものだろうか。どうすれば利用者さんに心をひらいてもらえるのだろうか。そういったことを学んできたけれども、いま満足にできていない現状があります。例えば利用者さんとおはなしをする簡単なことでも、なかなかできていないのが悔しいです。この時間までに排泄介助をしないといけない。この期日までにこの書類を作成しないといけない。毎日の業務に追われてしまっています。利用者さんのなかには認知症の方もいらっしゃって、当然ですが私たちの思い通りに生活してくれません。その瞬間、イライラしている自分が凄く嫌になります。このようなとき、他の職員やリーダーに相談するように心がけています。
リーダーはどれだけ忙しくても利用者さんに対し丁寧に対応をしています。心に余裕を持ち、利用者さんのことを思いながら支援・関わりをしているんだと感じます。先輩たちのようになりたくて、リーダーをお手本としながら、毎日働いています。その影響なのかは分かりませんが、最近、認知症の方がなぜ提案を拒否するのかを考えることを意識しています。そして、彼らが感じる不安に寄り添うようになってきたと感じています。リーダーに比べるとまだまだ未熟者ですが、利用者さんの思いに寄り添うことが、自分の気持ちを落ち着かせることにつながり、イライラすることが少なくなっています。

「あなたの存在はとても大きいんだよ」先輩からの一言がわたしの気持ちを変えた

わたしは大学で福祉を学んできましたが、介護は学んでいません。まったくの介護初心者です。専門学校を卒業した同期や同じ部署の先輩からベッドから車イスへの移乗介助や排泄介助など介護の基礎を納得いくまで教えていただきました。介護技術が1つできるようになったら、自分のことのように一緒に喜んでくれました。わたしが初心者のため、利用者さんに迷惑を掛けているのがつらいと思っていたときに、利用者さんから「わたしでいっぱい練習してもいいよ」と声を掛けてもらうことがありました。その言葉があったおかげで心が救われました。利用者さんのためにもっと頑張ろうという思いが湧いてきました。
働きだして数か月が過ぎたころ、つらいことが重なり、仕事を辞めたいと思うことがありました。このとき同じ部署の先輩から「柴田さんがあそか苑に来てくれて良かったよ。まわりのみんなが笑顔になっている。あなたの存在はとても大きいんだよ」と温かい言葉を掛けていただきました。まわりからわたしは必要とされていることをひしひしと感じることができ、もっとこの仕事を続けていきたい、この人たちと一緒にずっと働いていきたいと思いました。一緒に働きはじめた同期はみなさん違う部署ですが、新卒全員が集まるチューター研修やグループラインでのやりとりがあるので不満はないですね。みんなとつながっている気がするので、頑張ろうと思います。また、隣の部署に同期がいるので、夜勤が一緒になったときはその日のことを話したり、悩みを相談し合ったりしています。
同期との関係だけでなく、先輩との関係もすごく良いですね。わたしができたことは一緒に喜び、褒めてくれます。できていないことはきちんと注意してくれます。わたしからも言動や介護のなかで駄目なことや改善することはきちんと指摘をしてほしいとお願いしています。先輩たちは単に間違いを指摘するだけじゃなく、どうやったらできるようになるのか、どうすれば良い方向に向かっていくのかを一緒に考えてくれます。こんな先輩たちがいらっしゃるので、職場の環境に恵まれていると本当に思います。

笑顔で接することが寄り添う支援の第一歩

介護のしごとには笑顔が大切です。利用者さんが笑うのは職員が笑っているからだと感じます。だからこそ、わたしは笑顔をとても大切にしています。笑顔であることは前提として持ち、さらに利用者さんに寄り沿った支援をしていきたいです。
意思をあまり出さない認知症の方はどのような思いを持ち、どのようなことをしたいのかがなかなか分かりづらいです。どのようにすれば意思をあまり出さない認知症の方の意思を表出し、実現していけるのかをずっと考えていました。その人自身を知ることからでしか実現できないという答えにいたりました。どんな家庭環境で育ち、どんな生活を送り、どんな仕事をしていたのか。それらを理解し想像すれば、意思が分かってくるのだと思います。1人ひとりに合った支援をするにはまだまだ情報が少ないのが現状です。ケアマネを含め、いろいろな職種や場所が連携をしていければ、利用者さんが本当に望む生活をつくっていくことが可能だと思います。また、利用者さんの生活履歴を知るためには、ご家族との信頼関係を紡がないといけませんし、ご家族との関わりをもっと大切にしていかないといけないと思っています。わたしは介護の現場だけでなく、利用者さんの送迎も担当しています。そのとき、ご家族の方と直接話をする機会があり、家族の思いやニーズを知ることができます。ここで得た情報をチームに共有し、日々の介護につなげていくことが利用者さんのためになっています。
将来、「地域福祉」の分野で働きたいという考えは変わっていません。これからデイサービスや在宅介護の仕事もしてみたいです。まだまだ特養で働き続け、移乗や排泄などの介護技術をもっと身に付けたいという思いもあります。まだまだ経験もスキルも足りていないので、色々な業務をチャレンジしていきたいですね。

自分の意思に反してショートステイを利用している方たちが、ここに来るのが楽しみ!と思える工夫をしていきたい!

利用者さんはテレビを見ている、もしくは、部屋のベッドで寝ていることが多いんですね。もしかしたらこれらの行為が、その人が望んでいる行為かもしれません。けれども、「やることがない」、「不安だから寝ている」ときもあると思います。特にショートステイの場合、本人の希望ではなく、ご家族の都合のため利用している場合も往々にしてあります。来たくないのにショートステイに来ている方もいますし、正直に「家に帰りたい」とおっしゃる利用者さんも結構います。自分の意思に反してショートステイを利用している方たちが「介護施設を楽しめるようにするにはどうすればいいんだろう?」「ここに来るのが楽しみだと思ってもらうにはどうすればいいのか」というのは以前から考えていました。
昨年(2017年)10月に、全国老人保健施設協会の全国大会に参加する機会がありました。全国各地の介護施設の職員が自分たちの取り組んだ事例を発表していく内容です。いままであそか苑だけをみていて悩んでいたのですが、別の介護施設の発表をお聞きし、「こんなことができるんだ」「こんな取り組みにはこんな効果があったんだ」と色んな視点から学びました。その学びをあそか苑に還元し、もっと現場でできることがあるのではないだろうかとすごく刺激になりました。あそか苑に足を運びたくなること、職員のやる気や意欲がわくような仕掛けや職員1人ひとりの存在意義や存在価値を高める取り組みをあそか苑でもやっていきたいです。

相手を受入れ、理解する人と一緒に働きたい!

1つ目は、やっぱり「笑顔が素敵な人」と働きたいですね。2つ目は、お年寄りと関わるしごとをしたい気持ちを持っている人。私たちより長く生きてきている人だし、たくさんの経験を積み上げてきているので尊敬すべき人で、大切にしないといけない人だと思います。3つ目は、利用者さんがおはなししている内容やこの内容をおはなしした思いに耳を傾けて、自分の意見を押し付けずに相手の考えをまず受け入れて、相手を理解しようとすることができる思いやりを持った人と働きたいです。そして4つ目。一緒に働いて、お互いが切磋琢磨し、成長しあえるような人と働きたいです。